幸せ

先日、地下鉄の中で内田善美の『草迷宮・草空間』と『空の色ににている』を久しぶりに読み返しながら神保町に着いたとき、突如、幸福感としかいいようのない感情が湧き上がった。内田善美を読んでるうちに神保町に着くなんて、なんて幸せなんだ。

内田善美大島弓子は、私にとって人を想う気持ちの原点であるような気がする。などと言っても、そんな理想的な関係を若い頃経験したことなどなく、今となっては、ただもうまるで蜃気楼を見るようにたまに読み返すだけなのだが。そして、それと対極にある恋愛の原点は、山岸涼子の「日出処の天子」だった。どれもこれも、もう古い話だ。
古い話をしたついでに、恥ずかしい思い出話をすれば、大学生のときに、チビ猫のイラストを持って美容院へ行き、この通りにしてくれ、と言ったことがある。美容師の腕が確かだったのか、髪型だけはそっくりになった。後にも先にも、あのときほど、はっきりきっぱり美容院で自分の意思を表明できたことはない。


その後、神保町をチャーミングなガイドさんの案内で散策していたら、偶然、『世界文学ワンダーランド」の著者の牧さんにお会いした。その直前、同行者と『世界文学ワンダーランド』の話で盛り上がっていたので、びっくり。
牧さんはどこでお会いしても、ごあいさつすると必ず、あいさつを返してくださるだけでなく、二言、三言印象に残るお話をしてくださる。今回は、本というのは粗筋や登場人物で覚えているものではなくて、印象で覚えているものですよ、という話をお聞きすることができ、ああ、それでいいんだ、と、すぐ粗筋など忘れてしまう私はうれしかった。
『世界文学ワンダーランド』は既にあちこちで言われているよう、〔はじめに〕とそれに続く〔とってもよくわかる「わたしたちの文学」〕を読むだけで、楽しくなってしまうような本だ。海外文学に疎い私にとってはありがたい本だ。

草迷宮・草空間

草迷宮・草空間

空の色ににている (ぶーけコミックス)

空の色ににている (ぶーけコミックス)

綿の国星 (第1巻) (白泉社文庫)

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世界文学ワンダーランド

世界文学ワンダーランド