唐津

先日、博多へ行ったついでに、唐津へ行った。
唐津はお天気が良かったせいもあるのだろうけど、明るくきれいな町だった。幸いに後先考えぬ無茶な開発からも逃れ、昔ながらの小さなアーケイド街があったり、魚屋が並んでいたりして、どこか尾道を思わせる町だ。

唐津城下だけあって、呉服町、米屋町、刀町、弓鷹町、桜馬場、坊主町など故ある町名がそのまま残っている。

杵島炭鉱の炭鉱主として知られる高取伊好(たかとりこれよし)の邸宅、旧高取邸は月曜日休館で見学できなかったが、辰野金吾の弟子、田中実の設計した旧唐津銀行本店は見学することができた。
昼食前の時間潰しにと訪れた、「曳山展示場」もよかった。古いものは文政二年、新しいものでも明治九年に作られた唐津くんちの14台の曳山(やま)が展示してあるのだが、これが見れば見るほど美しく、是非、一度は実際に唐津の町や浜で曳かれているところを見たいと思わせるものだった。


何年か前、福山の鞆の浦を訪れた時、心ひかれるというよりも、むしろ動揺したといっていいほどに感情を揺さぶられたのだが、今回、唐津の町にも同じような揺さぶられ方をして、町を歩きながら、気がつけばこの町で暮らす自分を思い描いていた。
鞆の浦唐津も、共に幼い頃に一度訪れたことがあるのだが、それ以外には私にとってなにも縁のない地だ。旅行が好きであちこちに行っているが、こういう揺さぶられ方をしたのは、いまのところこの二ヶ所だけである。

なにか鞆の浦唐津に共通するものがあるのだろうかと、博識な知人に尋ねてみたら、どちらも異国船が立ち寄る場所だと教えられ、それ以来、納得したような、狐につままれたような気分が続いている。