泣く女

わりとよく泣く。電車の中から桜を見つけて、その瞬間、なにが脳の中で喚起されるのかよくわからないが泣いたりする。小さな犬がおばあさんと散歩しているのを見て急に泣くこともある。メダカが泳いでいるだけでじんわりすることもある。年を取って涙腺が弱ったのか、くたびれた脳が誤反応しているのかよくわからないけど、誰に迷惑かけるわけでなし、他人の視線が気になることもあるけど、仕方ない。
でも、こういう涙を流すのは、情緒が不安定で、感情をうまくコントロールできていないということなのかもしれない。
嘘泣きするのも、感情をコントロールして涙を抑えるのも、元は同じような能力によるもののような気もする。他人の評価をどうこうしようとする行為でもあるわけだし、どっちが立派ということもないような気がする。
泣くのをこらえれば気丈と讃えられ、わんわん泣くのは幼いと呆れられることが多いが、そんなこと他人の言うことでもない。
泣きたい時に泣いて、面白くない時に面白くない顔をしていたい。


ヘッセの『デミアン』だったかな、友だちの前で堂々と泣く青年が出てくるシーンがあって、中学生の私は、いいな、と思った。