感動文学、広く求む! byシジジイ

たまにマイナーな沿線情報誌に本の紹介文を書いている。600字ほど書けばちょっとしたお小遣い程度にはなる謝礼にひかれて応募したバイトなのだけど、始めてみるとこれがかなり苦しい仕事であることが判明。

なにが苦しいって、本の選定が苦しい。ライターに採用されて初めてわかったのだが、基本的には、新刊、もしくは準新刊の「感動的な純文学」を紹介してくれということなのだ。そんなものあったらこっちが教えてほしいわ。ということで、おもしろい本だったらなんでもいいと思っていた私にとっては大誤算。
ミステリーはたまになら許されるがSFはどうもいけないらしい。ましてや、ノンフィクションやエッセイは一年に一回くらいにしてもらおうかしら、と岸朝子さんをちょっと若くしたような編集長がおっしゃる。そんなぁ、殺生な。

そういえば純文学からずい分遠ざかっていた。新刊が出る度読む作家なんて数えるほどもいない。最近では川上弘美くらいかもしれない。
大体、最近の帯や書店の手描きの惹句がひどすぎる。あれも文学から足が遠のいた理由の一つだ。
どれもこれも作者会心の最新作で、ロングセラーで、涙が止まらなくて、人を愛する意味を真っ向から問うていて、魂を揺さぶる問題作だということになっている。そして、信じて読んでみれば、読んだ時間を返せ、と詰め寄りたくなるようなものが多い。
見る目のない私がいけないんでしょうけど。

そんなわけで、そろそろ次の本を選ばないといけない時期なのだが、全くあてがない。
なにしろ最近読んだ中で一番おもしろかったのは、町田康の「パンク侍、斬られて候」マガジンハウス だったのだ。はたしてこれを「感動的な純文学」として紹介してよいものか・・・。苦しい。お腹、ふってしまいそう。