動くレム byシジジイ

国書刊行会スタニスワフ・レム・コレクション 全6巻の第1回配本「ソラリス(Amazon)刊行記念の「巽孝之×沼野充義トークショーが10月13日に神田の三省堂で開催された。

訳者の沼野充義さんがレムにインタビューした際の本邦初公開のレムを撮影したビデオの上映があると聞いて出かけてみた。

定員100名と聞いていたが、なかなかの盛況。やっぱりみんなレムの話を沼野先生から聞きたいのかな。と思っていたら、のっけから巽先生がいきなりマイクを握り、ご自分とレムとの出会いや、なぜここにご自分が座ってらっしゃるかをノリノリで説明してくださる。
あれれ、今日は沼野先生が「生レム」の話をしてくださるのじゃないの……?
当の沼野先生は、巽先生が話してらっしゃるそばでいきなりおしぼりで顔をごしごし。

そうこうしてるうちにビデオ上映、わーい、レムだレムだ、と思ったら大違い。タルコフスキーとソダ―バーグのそれぞれの「ソラリス」の海の描写が映写される。レムはタルコフスキーの「ソラリス」すら気にいらなかったのだから、ソダーバーグのエロスに満ちた「ソラリス」が気にいるわけもないだろう。
タルコフスキーの映画を観たら、宇宙に行きたくなくなる」というお言葉には、タルコフスキーファンの私も納得するしかない。

さて、その後も巽先生、しゃべる、しゃべる。しゃべりまくって、時々沼野先生に「そこらあたりはどうでしょうかね」とマイクを向けてはみるものの、またすぐ、しゃべる、しゃべる。おいおい、時間がどんどんなくなるじゃないかよお。

やっと、沼野先生の撮影なさったレムのビデオがはじまる。
「おおおおおお、レムが動いてるううう!」
なんとなくヒッチコックみたいなイメージだったのだけど、もっと意地悪そう(笑)
ビデオを見ながら沼野先生の話してくださる「生レム」の思い出話は、レムへの尊敬と愛に満ちていて、すごくすてきだった。もっと話していただきたかった。
ところで、レムは詩作もしていたのだそうです。沼野先生は今回のコレクションにそれも入れたかったそうですが、レム本人に反対され断念したとのこと。

さて、トークショー終ってから、とてもキュートなお三方とご一緒させてもらって軽く飲み、愉快な時間を過ごす。みんな桁違いの読書量で、正直たまげる。うらやましい。
矢野徹氏逝去の報をここで聞く。


蛇足になるの承知で追記を。
この日記を読んで、なぜいまさら「ソラリス」?って思った方もいらっしゃると思う。私達が今まで読んでいたハヤカワ文庫版は、ロシア定本からの訳で、ポーランド語からロシア語にする時に抜けてしまったところが何箇所かあったのだけど、今回はポーランド語の原典からの新訳なのでいままで読めなかったところも読める完璧版ということなのです。