庭と言えるのかどうか、迷ってしまうほど小さいものだが、リビングの前に庭がある。
引っ越したのが11月だったので、5本のカイヅカが道からの目隠しになっているのと、芝生とバラが何本か植えてあるな、というくらいの印象しかなかった。
だいたい、あまり庭いじりに興味がない。
実家には広過ぎる庭があったが、父が生まれる前からずっと同じ木が生えていて、大きな庭石と石灯篭と手水鉢が居座っているような、ガーデニングとは対象にあるような古臭い庭だったので、犬と遊ぶか虫を探す以外には、滅多に、庭に降りることもなかった。時々、手伝わされる草むしりが苦痛だった。うちでは草取りといわず、草むしりとか草抜きと言っていた。


実家がうんざりするほど古臭い家(中学生まで、まきをくべる五右衛門風呂に入っていた)だったので、反動で私はマンションが大好きだ。一生マンション暮らしをするつもりだった。
ところが、去年の夏、もう少し広いマンションへの住み替えを考え始めた途端に、たまたま、駅に近い手ごろな大きさの中古住宅を紹介され、立地も気に入ったし、本部屋も確保できそうだったので、一戸建てに引越しをすることになった。引越し前はもちろん、引越した後も、夏になったらカメを庭にだしてやれるな、と思っただけで、庭のことなんか見てなかった。


冬の寒さが緩んだ頃、まず最初にクリスマスローズに驚かされた。気がついたらちょっと前までなにもなかった玄関脇にわさわさ花が咲いていた。家の裏に回ったら、そこにもたくさん咲いていた。
それから、ムスカリが2、3本きれいな青紫色の花をつたと思ったら、あっという間に庭中にムスカリが広がった。
そうか、ここはそんな庭だったのか。前に住んでいらした方の顔を思い浮かべながら感動していたら、バラがどんどん葉を伸ばし、紅く色をつけてきた。どんな色の花が咲くのだろう。
自分の家の庭や玄関なのに、ふーん、そうだったのか、と日々驚くばかりだ。
玄関のクリスマスローズの反対側には、枯れたとしか思えないようなぶどうがあって、つい最近まで幹を触っても生きてる感じがせず、かわいそうに枯れてしまったのか、と思っていたのだが、先週から急に手品のように枯れた幹から葉がふきだして、小さな葉がみるみる大きく広がり、あっという間にぶどうらしい姿になった。


庭に春がくるって、こんな感じだったかな。
かなり、楽しい。
もちろん、雑草もたくさん生えてきている。草むしりをしなくてはいけない。



春といえばSFセミナー
今年は5月2日。
今日、やっと申し込みしてきた。