『ぼくがカンガルーに出会ったころ』

浅倉久志さんが亡くなられたと聞いて、早一週間。
多くの人が多くのことを語ったりつぶやいたりした一週間、私はただ気落ちしていた。
翻訳家の死でこれほどうろたえることは、人生で後にも先にもこの一度だけだろう。
好きな作家はたくさんいるけれど、でも、結局、今日までの人生で、誰の文章をいちばんたくさん読んできたかといえば、浅倉さんの文章にちがいない。
2005年11月10日に、私は浅倉久志さんに初めてお目にかかった。
日記を読み返すと、うれしくて大興奮したのが甦る。
日記には恥ずかしかったのだろう、書いてないが、このとき、全然関係者でもないのに、知り合いが何人かいたのをいいことに、打ち上げにまでついていって、ちゃっかり浅倉さんのお隣に座って、ビールまで注いだのだ。
すっかり浅倉さんが身近な人になったような気がして、浅倉さんが覚えてらっしゃるはずもないのに、その後、SFセミナーの合宿の開会式にいらしたときも、SF大会でお会いしたときも、遠くから強引にご挨拶した。「こんにちは」って頭下げただけだけど。


すぐにはとても手に取る気になれなかった浅倉さんのエッセイ集『ぼくがカンガルーに出会ったころ』を、やっと今朝、本棚から取り出した。
帯がちょっと背焼けしている。
ゆっくり読み直そう。

ぼくがカンガルーに出会ったころ

ぼくがカンガルーに出会ったころ