幸せな変態 byシジジイ

常々、ネットで奴隷を求めるご主人さまのお言葉に疑問を持っている。(そんなお言葉、どこで見てるんだよ、などと野暮な突っ込みはおよしになってね)
例えば、「嫌がることはしません」「愉しませます」「乱暴はしません」「当方、教養ある紳士」「痛いことはかわいそうでできません」「満足させます」「損はさせません」?等等。
これでは奴隷を探しているのか、女王様を求めているのかわからない。
しかし、完全にM女性慢性品薄状態のSM界では、例えプロのM嬢相手でもご主人さまは一方的に威張るわけにはいかないのであろう。

奇譚クラブ」の人々(河出文庫 北原童夢・早乙女宏美)を読んだ。「奇譚クラブ」はわが国初の総合変態誌である。戦後すぐから昭和50年廃刊までアブノーマルの教科書として熱い支持を集めた「奇譚クラブ」を検証したのが本書である。

この本ね、すごくおもしろいです。などと、芸もなにもない薦め方したくなるような本だ。図録、写真も豊富で楽しい。
特に伊藤晴雨のくだりは必見、必読。
晴雨の責めに対する徹底した意志は鬼気迫るものがあり、二度目の奥さんであるキセさんは妊婦になってまでえらくひどい目にあっている。
晴雨は亡くなる時、「奇譚クラブ」の実質的初代編集長、須磨利之の手を握って、
「いいか、サド・マゾをやめるんじゃないぞ。雑誌編集も今は苦しくても続けていけ。サド・マゾの夜明けは近いぞ」
と後を託したそうだ。
なんだかわからないが、すごい!感動だ。

しかし、ボンテージだ、ラバーフェチだ、なんだかんだと言ってはみても、フェチのほとんどはもう昭和三十年代には出つくしていたことに驚く。

冒頭にあげたような画一的な言葉で誘うご主人様は、きっと責めの場面でも画一的な言葉を口にしながら、どこかで見たようなゆるい責めを繰り返してるだけなのだろう。
そんなあなたには特に、開拓者魂あふれる、「奇譚クラブ」の人々、是非、お薦めだ。