飛びつつけた作家〜サン・テグジュペリ〜 byシジジイ

パイロットであり、「星の王子さま」の作者でもあるサン・テグジュペリは偵察飛行のため1944年7月31日、コルシカ島のボルゴ基地を偵察機に改装されたP−38ライトニングで飛び立ち、消息を絶った。

そのサン・テグジュペリの搭乗機の残骸がマルセイユ沖で発見され、墜落地点が特定されたという記事が昨日掲載された。
http://www.yomiuri.co.jp/culture/news/20040407i404.htm

勿論最初に読んだのは「星の王子さま」だ。
小学生の時に母方の叔母の嫁ぎ先で読んだ。洋裁の本ばかりが並んでいたこの家の本棚で唯一子供の気をひいたのが箱入りのこの本だった。帰り際に叔母はこの本を私にくれた。
その後、何度も読み返した。キツネの話が一番好きだった。でも、一読した時からこの本は子供の本じゃないな、と感じた。読んで充分に理解できる内容だし、面白いのだが、全部を読みきってもなにかまだわからないところが残っているような気がした。
いまになって思うのだが、これは私が初めて読んだ大人の本なのかもしれない。

サン・テグジュペリを作家として意識したのは「南方郵便機」を読んでからだ。もうすいぶんおとなになっていた。
ストーリーよりも砂漠を越えて郵便物を運ぶ小さな飛行機にとても魅かれた。コンパスを頼りに、見えぬアフリカの海岸を目指して高度二十メートルで海峡を越えていかねばならない、といういようなことが書いてあるだけで胸がきゅんとした。
さらに、トゥールーズバルセロナアリカンテ、タンジール、それらの魅力ある地名が地理音痴の私を幻惑した。
それらは作家としてのサン・テグジュペリというよりも、パイロットとしての彼が私に提供してくれたまだ見ぬ世界だったのだろう。

彼は第二次大戦に参戦し、年齢をごまかしてまで飛び続ける。そして、44歳になって間もなくこの世から消えた。
自殺説やドイツ軍戦闘機による撃墜説などあったが、今回みつかった機体からは弾痕はみつからず、プロペラにも損傷はなかったそうだ。

この記事を読んで久しぶりに読みたくなって、「南方郵便機」の入っている「夜間飛行」を本棚で探したのだが、みつからなかった。実は、先日カードの「無伴奏ソナタ」を探していてみつからず、ついでに「第七の封印」もないことに気付いたばかりだ。どうも三年前の引越しで文庫本を入れたダンボールが二箱くらい消失してるんじゃないかという気がしてしょうがない。確かめる術もなし、である。