邂逅の森

邂逅の森

邂逅の森

この本には普通なら手を延ばすことはなかったと思うのだが、少々わけあって読まないわけにはいかず、重い腰をあげてやっと読み始めたら、あっという間に読んじゃった。
久々に、はっきりとしたストーリーのある、実直な小説を読んだという気がする。小、中学生の頃、小説といえばこういうものだった。知らない世界を旅したり、経験できるというのが読書の素朴な、しかし基本的な愉しみだったはずだ。
いつのまにか、思索の迷路に呼び寄せてくれるような小説を上等であると尊ぶ悪癖がついていたなと苦笑。かといって、おもしろければそれでいいじゃん、とひらきなおる気にもなれないのだが。

大正時代のマタギと鉱夫の生活やしきたりがストーリーを損なうことなく巧みに解説されているのも、なんでも知っておきたいと思う人間にとっては楽しい。
主人公の人生を狂わすことになった文枝への恋情と、妻となったイクへの愛情の描き方もいちいち唐突であるところがかえって好ましく、読後に残る。


読書の素朴な愉しみについては、たしか昨年「白い果実」を読んだときも同じようなことを考えたのだが、すっかり忘れていた。

白い果実

白い果実