功名が辻

夫婦円満のコツは相手の言ったことを鸚鵡返しにすることだそうだ。

悪い例
妻「あの犬かわいいわね」
夫「なんて種類の犬なんだ?」

良い例
妻「あの犬かわいいわね」
夫「ほんとだねえ、かわいいね」

なるほどな、と思った。しかし、考えてみれば我が家ではすでに実践されている。ほとんどの会話は鸚鵡返しだ。確かにこれといって夫婦喧嘩をしたことがない。極めて円満だ。独身の方はそんな円満にどれほどの意味があるのか疑問を持つかもしれないが、円満は大事だ。


夫婦といえば、司馬遼太郎の「功名が辻」を読んでいる。大河ドラマが始まってすぐに歴史好きの友人が「原作を読んで大河ドラマを見ると、脚本というのはこうやって書くものなのか、と驚くよ」というので、司馬遼太郎のような大家の原作がある場合でもそんなに脚本と原作は違うものなのかと興味をそそられ、つい本屋で立ち読みしたらやめられなくなった。苦もなく読める文章でてきぱきと物語が進むので、あっという間にぐいぐい引き込まれる。さすが国民的大作家である。
しかし、しかし、これを世の夫に読ませてはいけない。一巻を読む限りでは、妻の手の内を実践例文付で懇切丁寧に解き明かした解説書なのだ。

サラリーマンと戦国武将を重ね合わせるほどロマンティストではないし、どちらかというといまさら内助の功でもないだろうと思ってはいるのだが、それでも夫に毎日気持ちよく働きに行ってもらって、できればそこそこ出世なんぞもしてもらえたらうれしいな、などと考えていると、結局は現代においても一豊の妻には遠く及ばずともそれなりのことをすることになってしまう。だからこんなふうに実も蓋もなく書かれちゃ困るのである。

それにしても、司馬遼太郎はすごいな。読書に疲れた時に、休憩代わりに司馬遼太郎を読むと言った人がいるらしいが、さもありなんである。心地よいマッサージを受けているような具合である。

新装版 功名が辻 (1) (文春文庫)

新装版 功名が辻 (1) (文春文庫)