『ベータ2のバラッド』刊行記念トークショー 若島正×大森望

未来の文学>「ベータ2のバラッド」刊行記念イベント開催!
青山ブックセンター六本木店リニューアルオープン記念イベントinストライプハウスギャラリー
『ベータ2のバラッド』(若島正編・国書刊行会
『特盛!SF翻訳講座』(大森望著・研究社)
刊行記念
「翻訳SFアンソロジーの愉しみ」 若島正さん×大森望さんトークショー   
日時:2006年6月11日(日)17:00〜18:30(開場16:30)
会場:ストライプハウスギャラリー(青山ブックセンター六本木店より徒歩5分)
    定員:40名様 
参加費:500円

行ってきました。まずは、ストライプギャラリーの狭さにびっくり。40人入るとギュウギュウ。


まずは、本日のテーマに掲げられた「アンソロジーの愉しみ」について。
若島先生が、アンソロジーを作るのが好きで、授業のテキスト選びも個人的にはアンソロジーを作っているようなものだ、とおっしゃっているのを聞き、何年か前にネット上で、先生が授業のために選ばれた十数編の短編のリストを見た時のおぼろげながらの印象を思い出す。
勿論、SF短編でまとめられていたのだが、非常にオーソドックスでいて、かつ、この作家はこの作品を入れるのか、と思うような驚きがいくつかあったような記憶がある。(こんなぼんやりしたものを記憶と言ってよいかどうか)


さて、話はすぐに本題の『ベータ2のバラッド』がニューウェーブSFのアンソロジーになっているやいなや、の話題へと突入。
若島先生は、とにかく、「ベータ2のバラッド」とカウパーの作品を一つ入れたかった。後は、それを入れるための言い訳みたいなものだとおっしゃり、大森さんは、これはSF史改変アンソロジーだとおっしゃる。
いつもながら、大森さんのこういう……うまくいえないのだが、なんというか、大森方式とでも言うべき技にやられてしまう。言われてからいつも、うまいことおっしゃるなあ、と感嘆するのだ。


確かに、<未来の文学>を一巻のケルベロスから読んでくると、ここで、ニューウェーブSFアンソロジーと名づけられたこの巻に、バラードやオールディスが入ってなくても、まあ、そんなものかな、とか、それもありかな、とわかってもないくせに反射的に訳知り顔で納得してしまうのだが、純粋にニューウェーブSFのアンソロジーのつもりで『ベータ2のバラッド』を手にとった読者は、ほうほう、これがうわさに聞くニューウェーブSFか、と誤解してしまうかもしれない。(あくまでも、そんなレアなケースが起こればって話です)


もうひとつ、大森さんがおっしゃったことで印象に残ったのはこれ。
「当初、読んだときは「エンパイア・スター」のほうが光ってると思ったが、今あらためて「ベータ2のバラッド」を読むと、ああ、こんな普通のSF読みたかったな、と思った」
これは、今回、巻頭の「ベータ2のバラッド」を読み始めてすぐに私も感じたことだった。
なにを「普通のSF」とか「いかにもSF」と感じるかというのは、勿論人それぞれなのだが、自分にとってはそれがどのあたりにあるのか、というのを最近ちょうど考えていたところだった。
それは好きな作家というのとは微妙にずれがあるような気がするのだ。今回、ディレイニーを久しぶりに読んで、『バベル-17』を初めて読んで、SFっていいよなあ、と思っていた頃を思い出した。もしかしたら、あの頃に、私の「普通のSF」の基準があるのかもしれない。根拠はまだなんにもないけど。


もっとも、そんなことは若島先生は先刻ご承知なので、編者あとがきにこうある。

SFを読みはじめた頃の、あのわくわくするような気持ちを思いださせてくれる「ベータ2のバラッド」を紹介することができて、とても嬉しい。