ぼくらの小松崎茂展@逓信総合博物館

混雑しているというほどではないのに、熱い会場だった。
会場の誰もが展示された作品に顔を寄せ、至近距離からなめるように隅々まで検分している。鑑賞しているというより各々の「ぼくの小松崎茂」を確認しているかのようだ。

小松崎茂というと、真っ先に戦車、それからサンダーバードが思い浮かぶし、私自身もずっとこの人のメカの描きっぷりに自分はひかれているのだと思ってきたのだが、初めてこうやって初期のスケッチから晩年携わったゲームの仕事までを並べて見るチャンスを得て、ずっと忘れていた、子供の私が強くひきつけられていた「わたしの小松崎茂」を確認することができた。

小学生の頃、弟が母にねだっては買ってもらっていた図鑑とも科学読み物ともなんともつかぬ本があった。立派な装丁のわりにとんでもないことばかりが書いてある本だったのだが、私は弟が新しい巻を買ってもらうたび弟より先に精読していた。

高い崖からまっさかさまに落ちていくだんなさんを超能力?で浮遊させて助け上げた奥さんの話や、漂流して食べるものがなくなったら靴を食べて生き延びろ!(30年以上も前の記憶に頼って書いているのでちょっと違うかもしれない)というまことに実践的なサバイバルの知恵や、遮光式土偶が円盤からおりてきてヤマトタケルノミコト風の男たちと闘うイラスト(30年以上……以下略)など、子供心をわしづかみにして離さない記事やイラストが満載の本だった。

そして会場で、私はかつてこの本で見てふるえあがったイラストと再会した。今見てもこの火星人はやっぱりすごくこわい。
今思うに、あの何巻もあった本の中には大量の小松崎イラストがおさめられていたのだろう。つい最近知人のブログに載っていた「イルカが攻めて来る日」のイラストもあの本にあったはずだと確信を深めた。知らぬ間に子供の私は小松崎先生の薫陶をシャワーのように浴びていたのだな。


残念なことにこの展覧会の図録は追加予約分を含め、完売していた。
しかし、幸いなことに、こんな本が出ている。わかりづらい場所に置いてあったにもかかわらず、会場でも飛ぶように売れていた。

ロマンとの遭遇―小松崎茂の世界

ロマンとの遭遇―小松崎茂の世界