俺はまだ本気出してないだけ

俺はまだ本気出してないだけ 1 (IKKI COMICS)

俺はまだ本気出してないだけ 1 (IKKI COMICS)

なんてイタいところをついたベタなタイトルだろう。原初のイタさから、二回転、三回転して、うまいとこついたタイトルだなと感心した。
高校の時の先生の「やればできる、やればできる、と思うとるうちに、手遅れになるんじゃ」というお言葉を思い出した。もっとも、当時の私は、やってもできん、と開き直っていたのだが。


久しぶりの衝動買い。作者も知らなければ、どんな内容かもわからないまま、レジに出した。


40歳で15年勤めた会社を、本当の自分を探すために辞めた「おっさん」の話だ。会社を辞めて一ヶ月、朝からごろごろゲームなどして、思いっきり自分を見失いかけていたおっさんは、突如漫画家を目指す決心をする。
しかし、「俺の40年の生き様をマンガで表現してやるよっ!!」と机の前に座り徹夜したものの「描く事・・・ねーなぁ・・・」と朝を迎えるダメぶりである。
ヘタレてるくせに自尊心ばかり強く、どこまでもずうずうしいおっさん。読み進めていくうち、自分のどこかにも「まだ本気だしてないだけ」に近い何かがあるような気がしてくる。さしたる努力もしないまま、このままじゃ終わらないぞと、夢の残滓のようなものを後生大事に抱えている。しかし、そんなもの、現代では、つげマンガの「無能」とも、私小説的な憂愁ともほど遠く、ただのギャグにしかならないことが、このマンガ読むとよくわかる。


このマンガを読んだ若い人は、「○年後の自分だったらどうしよう」と思うようだが、すでに、この主人公のおっさんより長生きしている私は、「40過ぎて、このおっさんみたいにしてられたら万々歳だよ」と思う。
このおっさんは本当は偉い。高校生の娘もいるのに(妻はいないみたいだ)会社辞めたり、いきなり漫画家目指したり、かといって血のにじむような努力するわけでもなく、ファーストフード店でバイトしたり娘にお金借りたりしながら毎日をしのいでいる。そういうのは小心者で毎日の些事に汲々としているおっさんには出来ない芸当だ。

ま、それにしてもはた迷惑なおっさんではある。