こうの史代

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

『夕凪の街 桜の国』のこうの史代の新刊。
戦中の広島、江波から呉へ嫁いだ浦野すずの生活が描かれている。
上巻は昭和九年一月に始まり、昭和十九年七月で終わっているので、戦時下とはいえ、絵の好きなのんびり屋のすずの毎日がこうの史代独特のユーモアをまじえゆったりと過ぎていく。


それにしても、昭和十年頃には、江波から草津(広島の地名)へ行くのに、大潮で海が引いてる間に歩いて渡っていったのか、と知って驚いた。こういう驚きは広島をよく知る者にしかわからないことではあるが、そういうことを含め、当時の人々の生活がしっかりと描き込まれていて、へえ、と思わされる。


連載を追っていないので、この後、話がどうなっていくのかわからないが、でも、呉や広島がこの後どうなったかは誰でもが知っている。

私の実家は広島でも、もう山口との県境に近いほうなので、呉とはずいぶん離れているのだけど、それでも父は、呉の空襲の時には海の向こうで赤く呉が燃えているのが見えた、と言う。


次巻を読むのはしんどいかもしれない。でも、著者の「平成19年の貴方への、昭和19年の見知らぬ町へ嫁いだ友達からの手紙のように読んで頂けると幸いです」という言葉を頼りに読みたいと思う。