「生誕80年 澁澤龍彦回顧展 ここちよいサロン」@神奈川近代文学館

巖谷國士が監修した「澁澤龍彦 幻想美術館」@横須賀美術館鎌倉文学館での手作り感あふれる「澁澤龍彦 カマクラノ日々」展、そして今回の神奈川近代文学館での「澁澤龍彦回顧展」、立て続けというほどではないが、この一年間で三回の澁澤展に出かけたことになる。


それぞれに全く異なったものを目指した澁澤展なので、比べて言うわけではないのだが、今回の「澁澤回顧展」は、澁澤の生い立ちや、友人、仕事を回顧するにあたり、丹念に写真、書簡が集められており、見るべきものが非常に多く、ずいぶん長い時間を会場で過ごすことになった。
最初のほうに展示されていた、父母と写った赤ん坊の澁澤の写真は初めて見た。澁澤は母に抱かれており、前にはかわいらしい玩具が並べられている。


若い頃は澁澤がどんな仕事をしているのかばかりが気になっていた。といっても、何をしたわけでもなく、書店や図書館で普通に手に入る著作を読んだに過ぎないのだが。
しかし、今や、澁澤がなにをしたかということよりも、この人がどのような日々を過ごしていたかということを知るのが、愉しみになっている。やっとミーハーファンであると公言できるまでにたどり着いたということだろう。思えば長い道のりだった。
ねじくれた過剰な自意識は、私に人前で「澁澤龍彦が好きです」と言う事を長い間許さなかった。ミーハーファンであることが露見するのが恐かったのだろう。稲垣足穂に対しても同じような感覚があったのだが、澁澤に対してのほうがより強かった。
今となっては、なんだかなあ、である。ずいぶん窮屈だったことだろう。


年をとって、図々しくなって、ちょっと素直にもなって、一年で三回も澁澤展に行っちゃった、と言えるようになって、幸せだ。


ところで、回顧展に、二枚ほど、巖谷國士の奥様が写っている写真があって、そのかわいさに驚いた。

会期は6月8日までなので、どうぞ皆さまもお出かけください。