速水御舟他

引越し騒動の間に、いくつか見たものがあるのだけど、慢性的に疲れていたし、集中してなかったのか、ひとつひとつの感想を書くほどに、まとまった印象が残っていない。


「大琳派展」―継承と変奏― @東京国立博物館
宗達光琳、抱一、其一の4つの「風神雷神図」が揃うと話題を呼んだ大展覧会なのだが、知らず知らず、私の目は、スミレとかレンゲとかサクラソウとかワラビとかツクシとかオミナエシとかシオンとか、相変わらず、そういう小さな野草が描かれた絵に、寄っていく。

本物より可憐で、私が見たい花が、またとない絶好の場所に咲いている。
いつか、こんな野を歩いてみたいと思う。
そんな光景は、琳派の絵の中にしかないのだけど。



速水御舟」@平塚市美術館
これはいろいろ驚くことの多い展覧会で、遠くまで行ってよかったなと、誘ってくれた人に感謝した。
御舟がこれほどに、多彩な絵を描いた画家だとは知らなかった。
一つの画風を確立しては、次へ、次へと向かっていった画家だったのだな。
近代日本画の大家というイメージがあるが、実は御舟は40歳という若さで亡くなっている。
亡くなる少し前に、新しい強い画風の絵をいくつか描いているのを見て、御舟ほどの画家が途上で亡くなった無念を思った。巨匠にはそぐわない言葉だが、いたわしい。



ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情」展 @国立西洋美術館
この画家の名を私は知らなかった。
一枚だけ、絵は知っていた。松浦寿輝の『半島』の装丁に「背を向けた若い女性のいる室内」が使われている。

見た人、見た人の評判があまりによいので、私も見に行く気になったのだが、見終わって、なんと、一貫したテーマしか描かなかった画家だろうと驚いた。
自分のモチーフに辿りつくまでの紆余曲折のない画家というのを、初めて見た。

ハンマースホイの絵に「静かなる詩情」という口当たりのよい穏やかなコピーが似合っているかどうか疑問ではあるが、19世紀末といえば、ウィーンではクリムトが極彩色の華やかな絵で、世紀末を煽っている時代であるのに、そんなものには全く動じず、ひたすら自分の思い描く寂寥だけを描き続けたことに、恐ろしいばかりの静かなる執着を感じた。それこそが、凡人にはどうしようもない資質というものなのだろう。

半島 (文春文庫)

半島 (文春文庫)



フェルメール展」@東京都美術館
会期終了の間際でもなく、平日に訪れたにもかかわらず、それはそれは、すごい人出だった。
がんばって見たつもりだけど、思っていたのと本物は色がずいぶん違うな、と思ったことしか覚えていない。