「具体」─ニッポンの前衛 18年の軌跡展 @国立新美術館

会期:2012 7/4〜9/10
展覧会Facebookページ: http://www.facebook.com/gutai.nact
『世界が認めた日本の前衛美術グループ、「具体」 その全貌が、ついに東京で明らかになる』


「具体展、行かなくちゃ行かなくちゃ」と言う声を、会期前からあちこちで聞いた。おお、そうなのかそうなのかと、私も行ってみた。
「具体」は、1954年に吉原治良が、神戸の芦屋で、若い芸術家とともに結成した前衛美術グループ。
会場に入ってすぐ、1955年に発表された、元々は野外(公園)に展示された作品が、まるで、竪穴式住居の復元のような風情で会場に設置されている。「早いなー、この時期、もうこれやってたのか」とかなり驚く。
その先に進むと、突然会場にけたたましいベルが鳴り響く。田中敦子の「ベル」である。
ああ、なんかこれ、懐かしい前衛の音だ。
ちょっと古い実験的な舞台や映画の中でも、このベルの音はよく鳴り響いていたよね。


それにしても、見れば見るほどおかしな人たちだ。
「われわれの精神が自由であるという証を具体的に提示したい」と言いながら、吉原治良という専制君主は「人のまねをするな」「これまでなかったものを作れ」という絶対命令で若い芸術家たちをがんじがらめにする。自由があるんだかないんだかわからない状況である。
鬼コーチのような吉原治良の締めつけが厳しければ厳しいほど、会員はもがき苦しみ、どんどんおかしなことになる。虎の穴状態である。白髪一雄とか、もうどうしちゃったんだとツッコミ入れたくなるようなおかしさ。
強度のある前衛を生み出した環境が、おおよそ前衛的でないことに驚く。
この虎の穴から飛び出して突っ走る陽性な勢いって、関西ならではのものだろうと感じる。ノリと言ってもいいのかもしれない。
「小難しい理屈より、ほとばしる勢いなんだなあ、芸術に必要なのは」と思ったことです。
これって、鑑賞する側にも言えることで、何かを読み取ろうとかする前に、ほとばしるノリで鑑賞したほうがいい。


このノリで、「具体」は世界に進出していき、世界で認められる。東京で認められたいなんて言わずに、いきなり世界なのが実にステキだ。
そして、吉原治良が亡くなったら、それでパチンとおしまいになる。
私の生まれる少し前から、大阪万博の頃まで、こんな人たちが関西で「前衛」していたんだな。久しぶりに驚いてばかりの展覧会だった。


「独創性を最も高く評価しなければならない」(1963年 吉原治良) この言葉をいつも忘れず行こう。