ルノワール<舟遊びの昼食>

ちょっと前になるのだが、「フィリップス・コレクション展」@森アーツセンターギャラリー に行った。
この美術展には誘ってもらわなければ行かなかったと思う。誘ってくれた友人に深く感謝している。その思いは日がたつにつれ大きくなっている。(招待券を持ってきてくれたからじゃないよ、念のため。勿論それもうれしかったけど)


アートの教科書と銘打たれているだけに、会場には有名な画家の作品ばかりが並ぶ。目新しさはなくていまさら、という感が正直最初はなくもなかった。でも、見始めるとどれもこれもすごくいい。どんどん幸せな気持ちになる。若いときには、多くの人が好み評価する美しく明るい絵に興味が持てなかった。素直に向き合えなかった。それはそれで若い時期の過ごし方としてはよかったのだと思ってはいるのだが、評価すべきものが素直に評価できていなかったということでもある。そのことをはっきりと自覚する大きなきっかけにこの美術展はなった。
もう一度、いろいろなものを素朴な気持ちでみてみようと思えた。

そして、この美術展のポスターにも使われた作品、ルノワールの<舟遊びの昼食>の前に立った時、その思いは確固たるものになった。この絵からは談笑のその声までもが聞こえてくるようだった。なんて楽しく幸せな気分にさせてくれる絵なのだろう。何度も複製で見てきた絵なのに、本物の前に立つと会場の空気までもが変容しているのを感じる。透明感がありどこまでも広がっていきそうな絵だ。
美術というものが担う大きな役目を体現している絵だ。そのことをいままで私はあまりに軽んじていた。


余談になるが、ルノワールになんていままで興味がなかったので知りもしなかったが、この絵には月の詩人ジュール・ラフォルグも描かれている。

しばらくは「回帰」や「懐古」をおそれず展覧会を回りたいと思った。そう思えるようなチャンスをくれた友人に感謝している次第である。


それで早速行ったのが
ギュスターブ・モロー展」@Bunkamura
であるのだが、それはまたいずれ。