2006年2月 3月

あれこれ展覧会に通ってみようみまねで作品の前に立っているうちに、少しは「見る力」がついてきたのかもしれない。以前より、脳にまで見たものがはっきり届くようになった気がする。大きな力をもった作品の前に立つと衝撃波が脳を直撃する。これは以前にはなかったことで、あいまいなもやもやしたものに包まれるだけだった。しかし、あいかわらず、見たものを言葉にするのは苦手だ。


☆ニューヨーク・バーク・コレクション展@東京都美術館
「日本に恋した」メアリー・バーク夫人が「日本美術」をコレクションしたのが、バーク・コレクションなので、この展覧会を見ると、縄文時代に始まり、近世絵画に至るまでの日本美術の流れが、逸品ばかりによってわかるしかけになっている。

お気軽な気持ちで訪れた展覧会だったが、いきなり最初のコーナーに展示された「古墳時代後期 埴輪」で息をのむ。こんなきれいな埴輪、見たことがない。額に巻かれた帯の文様やや頬の彩色がきれいに残っている。続けて置かれているやはり古墳時代の「横瓶」の灰釉のつくる模様にいたっては、人為的なものではなく、窯の中の炎の作用によって偶発的に生じたといくら説明されても信じられないほど完成されたものなのだ。
これが「コレクション」の力かと思った。歴史的価値があっても美しくなければコレクションには加えてはもらえない。これが博物館の収蔵品と個人コレクションの決定的な違いだ。

この後も、おそろしく保存状態のよい快慶とか、いつもはほんの少し残ってるだけでもありがたく見入ってしまう切金文様が、これでもかとばかりに全面残ってる地蔵菩薩立像とか、とにかく、驚くようなものがぞろぞろ並べられている。

絵画も曽我蕭白の「石橋図」、探幽の「笛吹地蔵図」、大人気の若冲などの有名なものは勿論、江戸時代の「大麦図屏風」のように作者がわからぬものにいたるまで、バーク夫人というハードルを越えたものだけが選ばれ、集められているだけに、明解で楽しい。小むずかしくないのだ。

趣味の良いセレクトショップでショッピングする快適さと比べてはあんまりだとは思うが、個人コレクションを見るおもしろさはそれによく似ている。


ところで、この展覧会の入場券を買おうと窓口に並んでいる時、後ろから年配のご婦人に声をかけられ、余っているからよかったら使ってちょうだい、と招待券をいただいた。ありがとうございました。



最澄と天台の国宝@東京国立博物館
天台宗開宗千二百年記念特別展 チラシによると「春爛漫、上野。百年に一度の大展覧会。」です。

「国宝 普賢菩薩像」が美しい。

以前「空海展」に行って以来、すっかり弘法大師贔屓の娘が大きな声で(本人はひそひそ声のつもり)「最澄より空海の方が字がきれいだよね〜」と言って周りのみなさんの失笑をかう。思わず親は苦笑い。正直私にはどちらの字がきれいともわからないのだが、子供の目には空海の字が派手にうつるのかもしれない。



☆藤田嗣冶展@国立近代美術館
☆花鳥−愛でる心、彩る技〈若冲を中心に〉@宮内庁三の丸尚蔵館
についてはまた後日。