エルンスト・バルラハ@東京芸術大学大学美術館 5月26日

このドイツ表現主義の彫刻家の展覧会は、今年いくつか観た展覧会の中ではわりと印象に深いのだが、その印象をどうにも言葉にできないまま半年が過ぎてしまった。しかし、先日の一木彫の「仏像展」以来、バルラハの作品がしきりと思い出されてならないので、言葉にならないまでも、今年、こういうものも観ましたという記録を残しておこうと思う。


エルンスト・バルラハは20世紀ドイツを代表する彫刻家、版画家、劇作家であるが、その活動の主である彫刻において木彫に取り組んだことが彼の大きな特徴となっている。
なぜ、木彫が特徴になるかと言うと、会場の解説を読んで目からウロコだったのだが、中世以降ヨーロッパではほとんど木彫が製作されていないからだ。なるほど、そう説明されてみれば、確かにヨーロッパの木彫というのを思い浮かべることができない。


バルラハは貧困や戦争に傷つく人々の姿をその作品に多くのこしている。そして自らもナチスによっていくつもの作品を破壊されている。そういったことが余計にそう思わせるのかもしれないが、作品のシンプルで直線的な輪郭や人物の姿勢からは祈りを感じ、どこがどう影響を受けているとはわからないままに、どこかしら、仏像彫刻を思い出す。題材が宗教的でなくとも、そこに宗教性を感じるのだ。
半年たってもあいかわらず言葉にするのは難しい。時間がたてばたつほどに、だんだん細かな記憶が薄れ、手元に残ったパンフレットに載っている数枚の作品の写真を見ながら、言葉にならぬ印象だけがますます深まり、いつか、またバルラハの作品を見ることがあればいいのに、という思いが強まっていく。