木村伊兵衛@エルメス8階フォーラム

昨日は少し遠出をするはずの一日だったが、あまりの天候に行き先を銀座に変更。
いつもは地味な場所で待ち合わせする同行者と、銀座三越のライオンのところ、という派手派手しい場所で待ち合わせ、煉瓦亭で昼食。時間が遅めだったのと、悪天候が幸いしたのかすんなり店内に案内される。
ちょっと迷って、ハンバーグとメンチカツをそれぞれ注文。アスパラガスのサラダとビールも頼んで、この物知りで酔狂な同行者に、今年も同行よろしくお願いしますとまずは乾杯。熱々のメンチカツがおいしい。


冷たい雨の中、まずはライカの2階で開催中の木村伊兵衛展。こちらはモノクロ。作品に囲まれてライカの愛好者が技術者と打ち合わせをしている。1階のショップには、数々のライカが宝石のようにディスプレイされている。ライカのデジカメを初めて見る。かっこいいな。
ずっと以前、少々憂鬱な事情を抱えたアメリカ旅行をしたことがあるのだが、そのとき、ある人がせめてこれで写真でも撮って来いと気前よくライカを貸してくださった。構えたときのバランスのいいコンパクトな重さが、シャッターを切るたびに私の背筋を伸ばさせた。もちろん、慣れないカメラ、しかも、一緒に貸してもらった露出計を使いこなすこともなく撮影したので、これという写真も撮れずに帰ってきたが、ライカを持ってアメリカに行ったという輝かしい記憶だけはいまでもこうして残っている。


それから、銀座エルメスで開催中の「木村伊兵衛のパリ」展へ。
エルメスビルの中に初めて入ったが、あの壁面がすべてガラスのキューブの建物は外から見るよりも、中に入ってみるほうがはるかにスタイリッシュで、しかも優しい印象だ。

こちらの展覧会はカラー作品。会場に入るなり、作品の斬新な見せ方に驚く。作品はすべて白い額におさめられ、大きなガラスのテーブルに立てて飾られている。いろいろな写真展に行ったがこんなディスプレイのやり方は初めて。後でこの空間デザインはコンスタンティン・グルチッチの手によるものと知る。プリントが全て、プリンターからの出力であることにも驚かされた。


いつもながら、写真を見るのは楽しい。私にとって一番リラックスして見ることができる芸術かもしれない。それでいて、熱くもなる。むやみと口数もふえる。
木村伊兵衛の写真は、特に、このパリを取ったカラー写真はどれを見ても穏やかで洒脱なものばかりだが、その向こうに、じっと長い時間シャッターチャンスが到来するのを待つ木村伊兵衛の姿が浮かぶような作品と、被写体に出会った瞬間にシャッターをおしたであろう作品があり、写真を撮るという作業の息づかいが聞こえてくる。
木村伊兵衛の写真には、じっとシャッターチャンスを待った末の作品だとしても、まるで息苦しさはない。そこが、私にとっては大きな魅力に感じられる。


それから、本日のもうひとつのメインイベント、ピエール・マルコリーニのチョコパフェを食べに行く。
噂にたがわず、おいしい。口に含むたび、パフェを構成するひとつひとつのパーツから、それぞれに香りがする。
当然女性客が多いが、男性の一人パフェや、無口な青年二人連れパフェの姿もちらほら見られた。
パフェのメインパーツともいえるチョコアイスはすばらしくおいしいが、たまらなく濃厚でもある。私には半量でちょうど良い。しかし、チョコ好きな同行者は「1パイントはいける」と豪語していた。


それにしても、高カロリーな一日であった。


[追記]
今、かつての同級生からメールが届いた。この日記を読んで、これから銀座に木村伊兵衛展、観に行くそうだ。お役に立ててうれしい。